17世紀後半の御深井焼

VATE:試されている感じですね。

 

一緒にお酒を飲んでいても、どう思う、どう思うってずっと聞くんですよ。ずっとそんな風に美味しさには理由があるって、そういうことを徹底的にやってましたね。

 

VATE:理由がちゃんとわかる、ということですね。

 

僕は本当に彼のことを信用していたので、彼が言う店は全部行くようにしていました。フランスに行くんだったら、ここと言われた店もちゃんと探して行きました。

 

VATE:実際にちゃんと行くというのが、すごいですね。

 

彼が絶対に行って欲しいと言っていた三ツ星に行って、これを食べてって言ったら、自分が行っているかのように目をキラキラさせて聞いてくれた、そういう人だったんですよ。

 

VATE:本当に食に真剣なんですね。

 

そうですね。骨董の師匠はデザインとか視覚的なこと、料理でいうと、塩少々とか適量としか書いてないじゃないですか。その適量の意味、そういうところを教えてくれたんです。

 

VATE:適量の意味?

 

うちの場合、窓枠はこれくらいで、サンが細くなくちゃ意味が無い。そういうことですね。エアコンの吹き出し口も、これだけ細くて、使ってる器具もこれだけ薄くないと全く意味がない。わざわざ隠しているんだから、ここまで厳しい線を出さないと駄目だというようなことを教えてもらってました。

 

VATE:柳野さんの基礎の一部になっているんですね。

 

僕自身自分で応用してるんでしょうね。このお店のレンガの積み方も、僕が注文したんです。毎日、職人さんを見張りつつ(笑)。

 

VATE:見張っていた?

 

煉瓦って下手したらめちゃくちゃ味気なくなるんです。だから毎日来てね。もうちょっと土を少なく盛って下さいとかね。

 

VATE:なるほど。

 

性格的に、なんでも理屈がなかったら納得出来ないんですよ。本当に感覚だけでは、納得できない人間なんですね。中途半端に哲学かじったし(笑)。