クロホシイシモチに囲まれるダイバー
南紀白浜にて

VATE:赤木さんは映像の世界にも活動の幅を広げておられるようですが、

写真と映像はずいぶんと違う世界のように思えます。

 

同じですよ。違うと思っているのはきっと知らない世界だからだじゃないでしょうかね。お互いの分野で妙に垣根を作っている。光を捉えて映像として記録するか、写真として記録するかの違いでしょう。

強いて違いを言えば、時間という概念が入るかどうかでしょうね。ムービーの世界ではスチルほどライティングにこだわった事が昔はなかったのですが、今は深いことやってます。例えば「どっちの料理ショー」なんかを見ればわかりますが、美味しく見せるにはどこからどんなライティングすればいいか研究されてますよね。ひと昔前の「今日の料理」にはなかった。

 

VATE:あと音もありますよね。

 

音声にしたってしかりです。スチルを見せるのに音を入れると効果は歴然と変わります。

昔、浅井慎平さんが「サーフブレイクフロムジャマイカ」ってやって話題になりましたが…写真家が音声だけのレコード作った。あんなのの写真と波の音だけのCDRやDVD作ってみたいあと思ってます。波を裏側から見たきらめきとか。動かなくっても音を聞いて眺めているとイメージが動き出すようなの…。

 

VATE:それだけ長い間、海に潜られていると海、

つまり自然環境の変化などにも随分と敏感になるんじゃないですか?

 

もちろんそうです。漁師さんがやっている養殖の裏側も見えてしまいますし、イケスがもたらす水中からの環境変化を目の当たりにすると、何とかしなきゃとおもいます。また、資源量をちゃんと管理するシステムをきちんと構築すれば、日本人が必要な蛋白源は海からカバーできると思っています。今のままだといたずらに水産資源をだめにしてしまう。底引き網漁や、巻き網漁、養殖という方法を今一度見直さないと日本近海の資源量はいくら豊富にあるといっても枯渇してしまいます。

 

VATE:サンゴについても、よく問題視されています。

 

沖縄や奄美のサンゴが死滅していっていることからサンゴの移植をイベントとして行ったりしていますが、まったく知らない人が見ればいいことをやっていると思われますが、サンゴは植物ではありません。種を植えたら自然に大きくなると思ったら大間違いです。サンゴがなぜその海域で死滅したかは、オニヒトデやヒメシロレイシガイダマシなどの外敵にやられるのもありますが、なぜその外敵が増えるのか、どうして白化現象を起こすのかを考えたら、その周辺を人間がいじっているからです。

その環境を変えない限りサンゴは元通りにはなりません。サンゴの移植で成功している事例は実はないのです。流れ込む排水や、赤土を抑え、自然のリーフを守ればサンゴは想像以上に逞しく回復するはずです。海岸にホテルを作ってその観光資源のためにホテルの前にサンゴを移植するイベントを組む。これが成功すると本気で思っているのでしょうか