木造住宅

VATE:しかしショッピングセンターなんて、

しょっぱなから出来るもんなんですか?総工費もすごい額でしょう?

 

ショッピングセンターの総工費は90億近くです。そんなところのデザインなんか素人にできるかって思いましたが、もう完全に開き直ってやってました。

 

VATE:もちろんわからないことだらけですよね?

 

そうですね。現場でゼネコンさんとの打ち合わせにしても何が何だかわからないんで、もう現場所長さんや現場主任さんには分からないことはハッキリ言って、知ったかぶりしないようにしてました。やっぱり怒られましたよ。「建築やってんだからちゃんと図面かけよ」って。そりゃ素人の書く図面ですからめちゃくちゃでした。でもいろいろ教えていただきながら、なんとかやってました。

 

VATE:大変そうですね。

話を聞くだけでこっちまで冷や汗かいちゃいます。

 

でもこの仕事で大変だったのは、プレゼンテーションすることでした。まず、自分で考えた案を先生にチェックをしてもらって、それから元請さんの社長と担当の方3人にチェックを受け、そして最後にクライアントさんの30人へプレゼンするという具合でした。

 

VATE:それはまた大変ですね。

 

大変でしたよ。みんな好き放題言うので決まらないのなんの。プレゼンの内容は図面を始め、CG、模型をつくっては持って行くんですけど、本当にたくさんやりました。クライアントさんへのプレゼンはほぼ月1回なんですが、元請けさんとは毎週です。これが1年半近く続きました。

 

VATE:1年半、毎週毎月プレゼンですか。

 

最後の方はかなり手は早くなるわ、言うことも立派になってくるわ、模型やCGの質感もよくなるわでかなり鍛えられましたよ。その中でも特にひどかったのは、プレゼンの前に元請けさんによってデザインコンセプトの内容をスリ変えられてしまうことでした。こちらとしては今までとは全く違った新しいデザイン手法を考え、それを元に空間をつくるっていうのが筋です。それ以外はありません。というのはそういう提案をして大手数社のなかでコンペで勝ち取ったからです。

 

VATE:コンセプトっていう根元の部分を変えられるのってちょっと考えられないことですね。

どんな風に変えられたんですか。

 

どのように変えられるのかと言えば、例えばこちらがある手法を用いてお客さんが楽しくなるような、ファサードを考えますよね。それは今までにない光り方をし、今までに無い形をしていて、どこそこの様式を模したものでもないものでした。

ところが、どんなに説明をしても元請さんはそれらを「中世ヨーロッパの伝統と、文化を取り入れた、うるおいのあるショッピングセンター」として説明するのです。これは全く意味が違いました。