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VATE:ある意味、臆病だから頑張れたという感じでしょうか。

 

そうですね。今でも1ヶ月ぐらい新規の仕事がないとか、マネージャーからちょっと今月は売り上げが少ないですとか言われると、めちゃくちゃ落ち込むというか。あ、ついに終わったんだなっていう(笑)そういう感じは今もあって。干されたなっていうか、あれ?なんか悪いことしたかな?(笑)みたいな事は今でも思っちゃいますよね。

 

VATE:確かにそういう恐怖はありますよね。

 

会社ってずっと続くじゃないですか。社員を雇えば責任もあるし。早く楽になりたいなとは思いますけどね。

 

VATE:今も引き続き臆病だと。(笑)

 

当時のクリエイティブブティックと言われていた会社は、今はほとんどなくなっちゃってるんですよ。やはり何かユニットで始めた人は、10年〜20年経つと考え方も変わっていけば、仕事の差も出てくるというか。そこで別れていくみたいな。それも知っているので、自分が何とかここまでやってこれたのは本当に良かったなと思います。

 

VATE:そうやって必死にコピーライターとしてのお仕事を続けながら、渡辺さんは本屋さんを始められましたよね。そもそもなぜ始められたんですか。

 

八ヶ岳に土地を買ったのがきっかけです。妻といつかは山に住みたいね、みたいなことを話していて2016年に土地を買ったんです。そこに家を建てて、週末だけ山に帰るみたいな生活を続けるうちに向こうにも知り合いが出来て、子供も生まれてと。そうすると、なんか子供の同世代の人と出会うようにもなり向こうでもちゃんと自分のやってることが欲しいなと思うようになったんですね。東京ですごく仕事を頑張っていても向こうに帰れば何にもないっていうか。「あー東京の人ね。」みたいなのがちょっと居心地が良くないなと思って。同時にずっと続いてる恐怖心を払拭するために、自分でいつかは何か他のことが出来るといいなと彷彿と思っていて。

 

VATE:2つの側面があるんですね。

 

それで県道沿いに事業用の土地だけ買っておいたんですよ。いつか何かやりたいね。やる時にはこの辺に無いものがいいなって妻と話して。

 

VATE:無いものがありましたか?

 

本屋さんがなかったんですね。あるにはあるんですけど、自分たちが行きたいような本屋さんがなかったから、本屋さんをやるのもいいねみたいなことを話している最中にコロナがあって。それで、その時に家族は向こうにごそっと移っちゃったんです。もうあっちで暮らそうと。東京の狭いところでリスタートとか言ってるよりは、山の方が全然穏やかに過ごせるなと。妻は電通にいたんですけど、会社をやめて向こうで暮らそうみたいな。そして僕だけ東京と行ったり来たりという今みたいなスタイルに変わった時に、本屋をやるなら今だなっていうか。

 

VATE:なるほど。

 

今やらないと、やる時間も体力もなくなるという事で、大幅に前倒しをして本屋さんをやることの計画を発動させたという感じです。

 

VATE:本屋を経営されたご経験はあったんですか?

 

いや、ないです(笑)。やった事もないし、いろんな人に相談に行ったんですけど、やっぱり広告の人が何か新しいことをやるというと、大体みんなうまくいきっこないみたいな言われ方をするんですね。でもなんか悔しいので本屋さんでアルバイトしたんですよ。週に2日間。

 

VATE:アルバイトを?!

 

はい。カフェも併設していた僕のイメージに近いお店だったんですね。オーナーも同世代で、そこで経営も学ばせてもらいました。