レアンドロ・エルリッヒ
《スイミング・プール》2004年
金沢21世紀美術館
撮影:中道淳/ナカサアンドパートナーズ
写真提供:金沢21世紀美術館

「メディアとして美術館を使ってみたい」

VATE:こちらでの秋元さんのお仕事とは?

 

美術館の経営です。今は整理の時期なので、ここの強みと弱みは何かという事を、もう一度自分だけではなくみんなで確認をして、業務を通じて共有する事をやろうとしてます。そうすることで21世紀美術館の理念やマインドが生まれてくるだろうし、それを土台にした運営が出来ると思うんです。この美術館は、日々変化する事業が、活動がそのまま美術館になっちゃう。地中美術館とはずいぶん違いますよね。

 

VATE:同じ美術館という名前でも大きく違いますね。

 

直島では作ることっていうのがすごく重要だったですけど、こちらでは作るというよりも現代美術をどうやって伝えるかとか、どういう風に拡げていくかとか、そういうことの方が重要なんです。やはり多くの人たちに共感してもらうという事がとても大切だし、いかにしてそういう仕掛けを作り込んでいくか。まぁ、ここでまた勉強させてもらってるんですよね。いろいろ勉強になりますよね。

 

VATE:せっかくお休みされようと思っていたのに、また走りはじめちゃいましたね。

 

そうですね(笑)。ただ、直島の時は自分もプレイヤーだったし、プレイヤーでいることが楽しかったんですけど、ここでは専門のキュレーターが数多くいますから、気分的にはマネージャーですね。それを自分に課してるところもあります。

 

VATE:少し外側から見ている、ということでしょうか。

 

自分が前線でひとりのプレイヤーになるのではなくて、監督として全体を見て、こういう時にはこういうフォーメーションの方がいいんだ、とかみんなが疲労せずに効率よく労力が出る組織かとか、外のお客さんたちの反応をどういう風に伝えるとモチベーションがあがるか、正しく伝わるか。逆に中で考えている事をどう伝えると外にうまく伝わるか、というような事を考えています。

 

VATE:なるほど。

 

ちょうど中と外の中間のところにヘビーユーザーというか、熱烈なファンだとかボランティアの人達がいるんですね。そういう人たち、により美術館の力になってもらうためには、どうしていけばいいのか。また、社会の中でどう美術を活性化させるか、という事も考えています。そのための装置として美術館というのをどう作り込んでいくといいのか。せっかく今までの公立美術館と違うことをやっているので、もう少し街を活性化する場所として美術館というのを位置づけたいんですよね。

 

VATE:美術館の位置づけを変える?

 

ただ評価をして世の中にある美術的なものを価値づけ、貯め込んでいく…というのではなくて、TVとかインターネットとかあるけども、もう少しダイレクトに、今という時代だからこそ、もうちょっと直接的に関われるフィジカルなメディアとして美術館を使ってみたいんです。

 

VATE:フィジカルなメディアですか。

 

フィジカルな経験的な施設としてはディズニーランドというがあって、その対極にある場として美術館を作っていかなきゃいけなんだろうなと思うんですよね。