photo by ゴトウマサミ

VATE:なるほど。

 

でも得るモノ、といえばそれは人と人との出会いですね。これは本当に大きい。生徒の一人一人は本当に大切な存在です。人の出会いって決して偶然じゃない。お互いが求めているから出会うし、次にまた会うために初めて出会う。だから出会いはずっと大事にしたい。人と人との出会いはどんなモノにも代え難い宝物です。

 

VATE:from now onで新しいアルバムを制作されたそうですが、

これにはどんな思いを込めていますか?

 

このアルバムは、初めてプロデューサー(堀尾哲二さん)を迎えて作った、初めてのフルアルバム、全曲書き下ろしです。2年もの時間をかけて、堀尾さんと私たちと3人、ほんとに3人4脚でじっくり練り上げて作ってきました。堀尾さんには、絶対足を向けて寝られません(笑)アルバムのタイトルは「ISNESS」。在るがままに、という意味の造語です。

 

VATE:オモシロイ言葉ですね。

 

ええ。Jazz ViolinistのMichael Whiteさんがこのアルバムのテーマを聞いて、このために言葉を作って付けてくれました。テーマを聞いてすぐこの言葉を思いついて、私たちに下さったんですが、後から「しまった、あれは我ながら良い出来の言葉だったな」と思ったそうです(笑)。曲はfrom now onを始めてからずっとそれがどこかに匂うように書いているのですが、やはり「光と影」をテーマに書いています。

 

VATE:光と影。

 

一番表現したいことである、命あるものの光と影。そこに吹く風。それを感じ取ってもらえたら嬉しい。光と影の映し出すまま、風の吹くまま、自分のあるがまま。そうあること、それを受け入れることはカンタンそうで一番難しい。でも、そういう風に居られたら、素晴らしい。

このアルバムを聴いて、ああ、自分でいいんだな、この風のままで、私はいいんだな、と思ってもらえればと思います。このアルバムは、光と影、という糸を織り上げて出来た、風をはらんだ織物。音からもジャケットからも、風が伝われば、と思っています。

 

VATE:奥本さんが好きなミュージシャンはどんな方ですか。

 

最も敬愛する歌い手は、Barbra Streisand。グラミー・アカデミー・トニー・エミーのアメリカ4大芸術賞の全てを取った唯一の人で、50歳を超えた今でも毎年一枚新譜を出してて、その歌声はほとんど奇跡的です。声や表現の隅々に、年を重ねたからこその深みと豊かさがあって、聴いただけで無条件に涙が出てきてしまう、ほとんど私にとっては神様のような人です。

私が好きなのは、ずっと音楽をやり続けているミュージシャン。昨年亡くなったCubaの女性シンガー・Celia Cruzも77歳で亡くなる直前まで新しいアルバムを出し続けてた。73歳のときのアルバムを持ってますが、自分の若さを謝りたくなるくらいの凄さです。