ブダガヤにて

不思議な偶然に助けられた。

VATE:随心院だったからこそ、というのもあったという事でしょうか。

 

隨心院の職員の皆さんに色々とご協力頂き、落ち込んでいるときも声をかけていただいたり・・・などたくさんの優しさをいただき、前向きに1年間を過ごさせていただくことができました。隨心院で1年間彫らせていただいたことによって、人々の優しさに触れ、「一人では何もできない、いろんな方が助けてくださってるからこそ、こうして私が生かされている」ということを身をもって知ることができ、ありがたい1年間でした。

 

VATE:それだけの想いをされて彫られた仏様、完成した時は如何でしたか。

 

もちろん完成した時は言葉に言い表しようのないくらいとても嬉しかったです。みなさんの思いがつまった祈りの仏様が完成した喜びと、彫り始めて1年後の渡印予定日の6月完成に間に合わせることができた嬉しさでいっぱいでした。ただそんな矢先、6月に途印する予定の仏様はインド・パキスタンの状勢が緊迫し、帰国勧告も発令されたため、延期して、2月に開眼法要をされることとなりました。

 

VATE:では実際にインドに渡られたわけですね。

 

そうですね。2月の開眼法要にむけて、私に声をかけてくださった内田さんとその子供さん二人、私の4人で少し早めの1月に仏様とともにインドへ渡ることとなりました。運送会社に電話一本すれば、世界でたいていの場所に物を運んでくれる世の中ですが、いざ実際に自分達で大きなひとつのものを運んでみると、はるかインドまで運ぶということの大変さが身にしみてわかりました。

 

VATE:みなさんでお持ちになられたんですか?!運送会社ではなく?

 

そうです。インド・カルカタに着陸した瞬間は「本当にインドの地に仏様がおりたんだ!」と実感と同時に感動がこみあがってきました。しかし、現地で迎えに来ていただいた車には、仏様を梱包していた箱が乗せられないため、その場で梱包をはずし、さらしを巻いた姿で座席にお座り頂きました。翌日の列車移動では直前に仏様を乗せるにもドアの幅を考慮できていなかったことに気づき、見た目には入るのは無理そうでしたが、なんと数センチの余裕で、二つのドアをぎりぎりの間隔で入る事ができました。座席も高さ数センチの隙間しかありませんでした。不思議な偶然に助けられました。

 

VATE:現地についてからも大変なことがあったんですね。電車に乗ってからはスムーズに行きましたか?

 

いえいえ。安心して乗ることもできませんでした。約9時間の寝台車での移動でしたが、仏様を置くと寝る場所もないし、窃盗などにあわないよう交代で寝たりしました。日本のように到着のアナウンスがなく、早く着いたり、数時間遅れる事は日常茶飯事で、昼間は窓からだいたいの位置を確認したり、到着予定時刻よりも早めにデッキまで運び出し、いつ到着してもいいように待ち構えたりと気の抜けないことばかりでした。