仏師・僧侶 前田昌宏さん
vol.11 2003.08.01
御縁が息づく時
浄土宗芸術家協会会員
自坊:浄土宗 九品山浄土院
前田 昌宏さん

御縁が息づく時

仏師・僧侶前田 昌宏さん

仏様,仏像は誰でもご覧になったことがあるでしょう。信仰の対象であり,芸術でもある。そして当然、作った人がおられます。

今回は仏師であり、僧侶である前田さんにお話を伺いました。

 

VATE:前田さんはいつから仏像を作りたいと思われたんですか?

 

中学二年の頃です。私の実家はお寺なのですが、その当時、朝のお勤め(勤行)をする為祖父と大師堂に入ると、いつも座られていた薬師如来座像がなくなっていたんです。警察に届けましたが、仏様は見つかりませんでした。

 

VATE:仏様を盗むなんてバチあたりな…。

ではそれがきっかけで仏像制作の道を目指されたんですか。

 

そうです。「なんとか自分の手で作って元通りにしたい!」と思っていました。

 

VATE:しかし仏様を彫るなんて、どうしたらいいんでしょうか?

 

仏様を彫るにはなんとか仏師の方と出会わなければなりませんでした。やはり教えを請うことが必要だったんです。

 

VATE:でもそう簡単に出会えるわけではなさそうですよね。

 

ええ。でもそれから二年後に私は高校に進みましたが、なんと!願いがかなったのか、美術の講師でこられた先生が「仏師」だったんです。「これはチャンス」とすぐに事情をお話しました。先生は「授業が終わったら私の工房へおいで」と、私の気持ちに心よく答えてくださり、これが私の仏像彫刻のスタートでした。

 

VATE:幼い時、前田さんにとって仏様というのはどういう存在だと感じておられましたか?

 

生まれた時からお寺にいたため、幼い頃はあまり深く考えてなかったと思います。朝起きて仏様に挨拶をし、寝る前にその日にあったことや、悩んでいることを話して「おやすみなさい」…というような生活を送っていました。私にとっては家族の一人のように感じていました。失礼な話ですが。